自然と戯れ、
アイヌ文化の一端に触れる。

阿寒アイヌ工芸協同組合

  • 釧路市

北の大地の先人、アイヌ民族。2020年には白老町に「民族共生象徴空間ウポポイ」がオープンするなど、その文化は多くの人の注目を集めています。釧路では、阿寒湖に暮らすアイヌの人々がアイヌ民族の文化伝承を広く伝えてくれるガイドツアーがあります。

アイヌ民族はこの世のあらゆるものに魂が宿っていると考え、中でも自然の恵みや人間にとって重要な働きや強い影響力があるものをカムイと呼びます。自然に語りかけながら植物を採取し、大切な人を思いながら自然の文様を木に彫り、刺繍する。そんな彼らの美しく尊い営みを垣間見ると、静かな感動と自然への畏敬の念に満たされていくのです。

アイヌコタンに刻まれる、特別な時間。

阿寒湖は、アイヌの人々が自然との関係性を育み、カムイと向き合って生きてきた場所であり、和人とアイヌ民族が共に暮らしてきた場所でもあります。現在阿寒湖周辺の森のほとんどは、前田一歩園財団が管理しています。初代園主がこの風景に心打たれ、「伐る山から観る山へ」と語ったその遺志が受け継がれ、3代目園主が土地を無償提供することでアイヌコタンが作られました。アイヌの人々が大切にする、「自然と共にある、人間らしい生き方」が実践されているのが、アイヌコタンの暮らしであり、それを体感できるのがこのツアーです。現在のようにSDGsがさかんに取り沙汰されるずーっと前から、ここでは「持続可能な観光」が行われてきたのです。

森に入り、生きる知恵を教わる。

「オンカミ、という挨拶です」と、案内人の瀧口さんが風にそよぐ草木のように柔らかく手を動かします。瀧口さんは、阿寒湖に暮らすアイヌの木彫作家です。このツアーでは、森の案内人を務めています。挨拶が済んだら、大きな木の下で森へ入るための儀式「カムイノミ」を行い、出発。「昔、アイヌの人々は採集のとき、木の皮で編んだ穴だらけの袋を使い、採集したものをこぼして歩いた。全部持ち帰るのではなく、鳥が植物の種を含んだ糞で森を広げるように」。ところどころで語られる、アイヌ民族の自然と連なり生きる知恵にハッとさせられます。

音楽、刺繍、木彫、料理で感じるアイヌ文化。

森の開けたところまで歩いたら、伝統楽器「ムックリ」の演奏体験。動物の鳴き声や風の音を真似た楽器は音を出すのにコツがいり、四苦八苦。静かな湖畔で森を歩きながら、アイヌの人々の知恵や文化に触れる時間は、何物にも代えがたく貴重なものに感じられます。他にも、アイヌ文様を施した刺繍作品や木彫を作る体験や、アイヌ料理を味わえるオプションなどもあり、さまざまな角度から文化を体感することができます。

阿寒アイヌ工芸協同組合

住所
釧路市阿寒町阿寒湖温泉4丁目7-84
電話番号
0154-67-2727
公式サイト

執筆スタッフ

片山静香

帯広市出身。手仕事(クラフト)の取材が大好き。趣味で白樺樹皮のカゴ編みや木彫り熊制作などを楽しんでいます。3児の母として子連れで行けるお店の情報にもアンテナを張っています。

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