北見ハッカの歴史を訪ねて。

北見ハッカ記念館・薄荷蒸溜館

  • 北見市

北海道の土産品売り場に見かける、ハッカ製品。北見では120年以上前にハッカの生産が始まり、1930年代には世界市場の約7割を占める名産地でした。現在の北見の礎を築いたハッカは、どのようにして広まっていったのでしょうか。

世界に輸出されていた北見ハッカ。

ハッカ油スプレーは夏の必需品。野山を歩くときにはブヨなどの虫から身を守ってくれるし、暑い日にハンカチに一滴垂らして首元に当てるとスーッと涼しく感じられます。他にも床掃除をする時に使うと爽やかな上、消臭作用があるとも言われ、生活の至る場面で活躍しています。北海道の土産品売り場では、ハッカ油だけでなく化粧品やお菓子など、さまざまなハッカ製品を目にすることでしょう。今回はそんなハッカの歴史を紐解いてみることにしました。

1900年頃から生産が始まった北見ハッカ。その発展に大きく貢献したのが、1934年に造られたホクレン北見薄荷工場です。1930年代は北見ハッカの全盛期で、世界市場流通量の7割のハッカを北見で作っていたというから驚きます。北見ハッカは、和種ハッカという種類で、洋種ハッカなど他の種類に比べてメントール成分を多く含みます。工場で加工された後、アメリカやヨーロッパに輸出され、主に医薬品やメントールタバコなどの嗜好品として使われていたそうです。

工場は開設から半世紀ほど稼働し、北見のハッカ産業を支え続けました。しかし価格の安い、海外の天然ハッカや、石油を原料にした合成ハッカが出回るようになると、北見ハッカを生産する農家も減少し、1983年に工場は閉鎖。工場は解体されましたが、旧事務所は北見市に寄贈され、1986年から〈北見ハッカ記念館〉として公開されることとなりました。

手間がかかった蒸留の仕組み。

記念館に隣接する〈ハッカ蒸溜館〉は、爽やかで心安らぐハッカ精油の香りに満たされています。館内ではミニ蒸溜機を使った蒸溜実演が行われ、乾燥したハッカを蒸すと発生する蒸気を冷却し、油を抽出するという仕組みがひと目でわかります。
ミニ蒸溜機からぽたぽたと流れ出た液体をよく見ると、油分と水分に分離しているのです。5㎏の乾燥したハッカからとれる精油は100cc前後。明治から昭和初期にかけて使われた天水釜式蒸溜機は、一斗缶分(約18リットル分)の油をとるのに、3日間ほどかかっていたそうです。1滴の油をとるのにも大変な手間と時間がかかりましたが、それでも他の植物に比べて多い時で7~8倍の収益がありました。ハッカはかつて“金のなる草”と呼ばれていたそうです。

ハッカという植物を中心に繰り広げられた、大きな産業の歴史。ポケットの中のハッカ油スプレーが、かつては世界市場を動かし、現在の北見の礎を形成した存在だったのです。

北見ハッカ記念館・薄荷蒸溜館

住所
北見市南仲町1丁目7-28
電話番号
0157-23-6200
営業時間
9:00~17:00(5月~10月)
9:30~16:30(11月~4月)
定休日
月曜(祝日の場合翌日)、年末年始
※月曜が祝日の場合は開館、火曜休館
金・土曜が祝日の場合は開館、翌日も開館
料金
無料
公式サイト

執筆スタッフ

猿渡亜美

帯広市の隣、芽室町出身。日高山脈・剣山のふもとで育ちました。学生時代は歴史学を専攻。特に明治、大正、昭和の時代を好み、古い建物や道具、当時の暮らしなどに関心があります。

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