十字街から、
新たな工芸文化を発信。

はこだて工芸舎

  • 函館市

〈はこだて工芸舎〉は、陶芸家の堂前守人(どうまえもりと)さんが主催する工芸ギャラリーです。1997年に宝来町で設立、2015年に十字街電停の目の前にある〈旧梅津商店〉に移りました。ギャラリーに並ぶのは、堂前守人さんやその家族をはじめ、函館や北海道の作家による陶器や雑貨、全国各地の工芸品。季節ごとの庭の風景が楽しめる箱庭カフェや、月ごとに開催される企画展など、訪れる度に新しい気づきを与えてくれます。そんな〈はこだて工芸舎〉の物語について紹介します。

歴史の詰まった建物に再び灯りをつけて。

十字街電停の目の前にある〈はこだて工芸舎〉。ノスタルジックな佇まいが魅力のこの建物はかつて、函館で財を成した梅津家の店舗兼事務所として使われていた場所です。昭和9年(1934年)の大火後に建てられたもので、本社機能が別の場所に移された後は数十年間シャッターが閉じられたままになっていました。

そんな建物に灯りをつけようと立ち上がったのが、現オーナーで陶芸家の堂前守人さんと、妻の邦子さん。1990年頃、愛知県の瀬戸から函館へと移り住みました。「この建物の存在を知ったとき、すでにいつ壊されてもおかしくないような状態でした。でも、建物の歴史や梅津さんが函館を中心に各地に大きな貢献をしてきた背景を知り、私たちがこの建物を引き受けられたらと考えるようになりました」。

こうして堂前さん夫妻は、元々宝来町で作家仲間と共に運営していたギャラリーを引き継ぐ形でこの建物へ移転することに。改装にあたっては守人さんを中心に、畳下の板など当時の建材を活用して補強を入れながらほぼ再建当時の姿へと復元。大きなショーウインドーやガラス戸の入口、建物をぐるりと囲むような広い風除室はそのままに。奥の住居部分に続く壁を抜き、オープンスペースにするなど手を加えながらギャラリーへと生まれ変わらせたのは、2014年のことです。それから現在まで、元々の佇まいを失わないようにしながら手入れし、大切に使い続けてきました。

函館を拠点に、工芸の豊かさを伝えていく。

建物に刻まれた歴史と堂前さん夫妻やスタッフのセンスを感じるギャラリーは、洗練されながらも味わいのある空間。陳列の一つひとつにもこだわりが散りばめられていて、眺めているだけでも楽しく、つい何時間でもいたくなってしまいます。

ギャラリーには、堂前さん夫妻の娘で陶芸家の堂前亜子さんが手がける陶の小物も。「お香立て」や「キャンドル立て」など、波紋をモチーフにした作品は日常にすっと溶け込みます。亜子さん自身が店頭に立つこともあり、作り手の思いに触れられるのもうれしいところ。ほかにも、北海道らしさを感じる木彫りのスプーンや色合いに個性を感じるカップなど、さまざまな作品が並びます。

「できるだけ作家さんと直接話して、背景にあるストーリーやこだわりにきちんと耳を傾けるようにしています。購入してくれるお客様に作り手の思いを届けるのも私たちの役目ですから」と、邦子さんは話します。

北海道だけではなく本州の作家の作品も扱うのは、地元のお客さんに日本各地の工芸品のすばらしさを伝えたいという思いから。月ごとに企画展を開催するのも、訪れる度に新たな発見をしてもらえる場所でありたいから。外から訪れる観光客には函館ならではの作品を、地元の人たちには日本各地の作品も。〈はこだて工芸舎〉は、ここを訪れるすべての人に工芸文化の豊かさを伝えてくれるギャラリーです。

はこだて工芸舎

住所
〒040-0053
函館市末広町8−8
電話番号
0138-22-7706
営業時間
10:00~18:00
定休日
無休(年末年始を除く)
公式サイト

執筆スタッフ

立田栞那

旭川市の隣、東神楽町出身。高校時代まで旭川で過ごしました。道内で自然ガイドとして働いた後、2017年からスロウ編集部へ。旅行部門で、スロウなツアーの企画にも携わっています。森や山を歩くことが好きです。

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