縄文ミステリーの世界へ。

函館市縄文文化交流センター

  • 函館市

世界文化遺産に登録され、注目されている縄文文化。函館市にはユニークな出土品をじっくりと見学できる施設があります。市街地からは車で50分ほどかかりますが、博物館と道の駅が続く複合施設や、近くには史跡垣ノ島遺跡もあり、体験を交えると半日から一日ほど楽しめるでしょう。

心高ぶる国宝との対面。

2021年7月、新たに世界文化遺産に指定された「北海道・北東北の縄文遺跡群」。函館市には国の史跡に指定されている大船遺跡や垣ノ島遺跡など多数の遺跡が発見されています。道南の縄文文化を伝える発信拠点となるのが、函館市縄文文化交流センター。北海道唯一の国宝など、1,500点の遺物を常設展示しています。

このように現在、注目を集める北海道や北東北の縄文文化。博物館を案内してくれたのは、学芸員の平野千枝さん。世界における縄文時代の位置付けから、出土した土器や石器、生活様式まで、ユーモアを交えてわかりやすく教えてくれました。意外だったのが、北海道と北東北の交流が割とあったということ。舟しか交通手段のない中で、苦労して海を渡り、互いの文化を伝えあっていたのです。

興味深い展示物を一つひとつ見ながらも、「いつ登場するのだろう…」と待ちわびていたそのとき。ついに国宝と対面することができました。暗闇の中に燦然と輝く姿は、初めて見た人でも特別な存在だとわかるでしょう。しっかりとした顔立ち、身体も腕以外はほとんど欠けることなく残っています。その名は、南茅部の「茅(カヤ)」と、中空土偶の「空(クウ)」を合わせて「茅空(カックウ)」。1975年に旧南茅部町の自宅の畑で農作業をしていた女性によって、偶然見つけられました。函館市立病院では診察券が作られ、CTスキャンを受けたことも。学芸員の平野さんもそんな経緯を愛おしそうに説明してくれるなど、いかにカックウが愛されているかがよくわかりました。

大人ほど無心になれる石磨き。

展示スペースを巡り終えたら、いよいよ体験メニューに移ります。挑戦したのは縄文ペンダントづくり。まずは好きな色の勾玉を選び、後は無心で角を落としていく作業です。そんなに時間はかからないだろうか、と思っていたら大間違い。滑らかな曲線、ドーム状に盛り上がらせるためには、地道な作業が必要でした。ひたすらやすりをかけるのみ。単純作業なのですが、意外と飽きることなく、気づけば30分以上が経過。「子どもより大人のほうが熱中するんですよね」とはスタッフの高谷さん。スマホもテレビも何もない時代、どんな思いを込めて縄文の人々はやすりをかけたのだろうか。頭の片隅でそんなことを思いながら、納得いくまで磨き続けたのでした。

函館市縄文文化交流センター

住所
函館市臼尻町551-1
電話番号
0138-25-2030
開館時間
4月~10月 9:00~17:00
11月~3月 9:00~16:30
休館日
月曜(祝日の場合は翌日)、毎月最終金曜、12月29日~1月3日
料金/一般300円、学生・生徒・児童150円
公式サイト

※縄文ペンダントづくりは60分、150円

執筆スタッフ

猿渡亜美

帯広市の隣、芽室町出身。日高山脈・剣山のふもとで育ちました。学生時代は歴史学を専攻。特に明治、大正、昭和の時代を好み、古い建物や道具、当時の暮らしなどに関心があります。

PAGE TOP