湯治で自分を取り戻す旅へ。
川島旅館
- 稚内市

浴室に入ると微かに感じる、石油のにおい。湯の表面には、油がうっすらと浮いています。風呂から上がった後も、ぴったりと肌に張り付くような感触が続くのです。湯上り後も、身体の内側がポカポカと温かい豊富温泉。全国各地から多くの人々が訪れる、稀有な湯です。
油を含んだ独特の泉質は、悩みを癒やしてくれる。
初めて豊富温泉に入る人は、驚くことでしょう。何せ、お湯に油が浮いているのです。温泉といえば硫黄のにおい、とイメージしがちですが、ここでは温泉といえば「石油のにおい」。原油を含んだ泉質こそ、豊富温泉の最大の特徴なのです。

大正時代、石油の試掘を行った際に温泉が噴出したことから、豊富温泉の歴史は始まりました。バランス良く含まれた温泉成分が肌に良いと評判を集めており、アトピーの湯治場としても注目されています。風呂上がり、翌日になっても肌がしっとりスベスベで、思わず「おお!」と感動しました。


川島旅館は地域で最も歴史ある温泉旅館。温泉は、冷泉の浴槽、温かい内風呂、やや熱めの露天風呂の3種類。季節や日によって油の濃度は少しずつ変化します。稀有な泉質をじっくり味わうには、やはり湯治を体験してみたいところです。
「この個性的な温泉の魅力を皆さんに伝えたい」と意気込むのは、川島旅館の女将、松本美穂さん。温泉をメインに、女性が思わずうれしくなってしまう工夫がギュッと詰め込まれています。例えば床。道産トドマツが使われていて、裸足で歩いてもほんのり温かく気持ちがいいのです。
宿の三代目、松本康宏さんが腕をふるうバランスの取れた食事も魅力的。料理の土台は北海道内のこだわりの野菜たち。豊富の乳製品や地元の山菜、魚介や肉類も充実しています。
最北の温泉街、豊富温泉。稀有な湯を味わいながら、「自分らしい」あり方を取り戻す湯治を。「最近ちょっと疲れが溜まってる」、「どうも肌の調子が悪い」、「よく眠れなくて」…。病気ではないのだけれど何となく調子が悪い、という方にもおすすめしたいです。
川島旅館
- 住所
- 豊富町字温泉
- 電話番号
- 0162-82-1248
- 料金
- 大人800円、子ども400円
- 日帰り入浴
- 13:00~18:00
執筆スタッフ

- 猿渡亜美
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北海道芽室町出身。大学卒業後、地元十勝に戻り、ソーゴー印刷に入社。十勝の魅力を伝えるフリーマガジン、月刊しゅん編集部を経て、2017年から雑誌スロウの編集に携わっています。明治、大正、昭和の時代を好み、古い建物や道具に関心があります。